第31話虎松の首徹底解剖その3

まえがき

先ほどオンエアの第30話潰されざる者は、脚本としては一定水準を満たしているものの、残念ながらこれに見合う演出が観られなかった(特に後半の、折角の小野但馬守政次こと高橋一生の渾身のアクティングが、演出のいまひとつの弱さで埋もれてしまっていた)こういう事象を見ると、これまで散私が貶めてきた森下佳子サンはともかくとして、演出サイドはおんな城主直虎の基本的コンセプトを本当にしっかり意識しているのか?と、とても心配になる。

時私は、オープニング曲天虎(あまとら)〜虎の女(とらのめ)を作曲した菅野よう子サンや同曲のピアニストランラン氏、同曲指揮者のパーォヤルィ氏の方が、よほど直虎への想いや理解がある様な気にさせられるのだが

〜おんな城主直虎オープニング天虎あまとら虎の女とらのめ〜

これには是非、NHKスタッフ群に怒りに満ちた否定をしていただきたいモノだ。

そういう訳で私は、佳作である第31話虎松の首に関しては、熱意に欠けた演出が見受けられた場合、とても許すことが出来そうに無い。

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第31話虎松の首徹底解剖その1

(本編)

龍潭寺に戻った直虎(柴崎コウ)は、虎松(寺田心)が無事に出立したことを南渓(小林薫)に報告した。(直虎)かたじけのう存じました。ところで、こちらはいかようになっておりますか目立たぬよう、直虎は久しぶりの尼姿だ。(南渓)村には徳政令の触れが周知され、関口殿(関口氏経矢島健一)がいま一度、戻ってこられたようじゃ(直虎)政次(高橋一生)はこちらには?(南渓)関口の手前もあろうからな。試されるの、こうなると政次への疑念を心から追い出そうとしているのを、南渓に見透かされてしまった。(直虎)はい

そのとき、怒号が聞こえてきた。驚いて戸を開くと、小野の郎党が昊天を恫喝している。こちらへ虎松様を引き渡されよ!ほかの郎党たちが寺の中を捜索し始めた。そこへ、政次が関口の手の者たちを引き連れてやって来た。その姿は、冷たい悪漢のようにしか見えない。

直虎の視線を感じたらしく、振り返った政次と目が合った。(直虎)これは一体、なんの騒ぎにございましょうか(政次)ここに虎松がおるであろう。おとなしく引き渡されよ直虎に代わり、南渓が慇懃に対応する。

(南渓)井伊は太守様(尾上松也)の命に従い、家を畳みました次第。謀反のかどでならいざ知らず、引き渡すいわれはみじんもございませぬかと。ひとつ理由をお聞かせ願えませぬか(政次)太守様が虎松の首をご所望じゃそれと引き換えに、政次に城代を任せると言ってきたのである。

どちらへ逃がした政次の意を受けたように、小野の郎党が南渓に刃を向ける。どちらじゃ!?知らぬ!とっさに直虎が切り返すと、政次は郎党たちに命じた。

(政次)この尼を捕らえ置け!虎松が捕まらぬ折は、そなたでご満足いただく。連れていけ!

政次!呆然として見つめる直虎を、政次は冷ややかに見返してくる。次郎!次郎!郎党たちに連行されていく直虎を、昊天が追いかけてくる。大事ございませぬ!昊天さん!とは言いながら、この先どうなるか、皆目見当がつかなかった。

政次は何を考えているのか悪いほうへ悪いほうへと想像してしまい、心にさざ波が立つ。心頭滅却しようと直虎はひとり、昨夜から閉じ込められている部屋で座禅を組んだ。しかし、すぐに悪漢のような政次の姿が浮かんできて邪魔をする。だめじゃため息をついていると、見張りの者が入ってきた。

庭へ来いとの仰せじゃ

嫌な予感がして、どきりとする。何故、庭へ?虎松の首をあらためよとの仰せじゃ

虎松の!絶句していると、有無を言わさず部屋からから連れ出された。主殿に関口とその手の者、庭先には、政次と小野の郎党たちが控えていた。庭の片隅には、南渓と昊天、領民たちも呼ばれて来ている。どうなっておる?問いかけるように政次のほうを見ると、無表情に見返してくるだけで、その顔からは何も読み取れない。こちらじゃ。まずそちからあらためられよ関口の家来に指図される。しかし、とても見ることなどできない。もし万が一、虎松の首であったら。あらためられよ!

正気を保てるだろうか。直虎は覚悟して目を開け、震える手で首桶を開けた。

中には、子どもの首が入っていた。しかし、その顔は。

何故、かような厚い化粧を施しておる!これではわからぬではないか!関口の家来がどなった。

ひどいありさまでございましたのでと政次が頭を下げる。ひどいありさまとはなんじゃ

虎松君は疱瘡を患っておいででしたので、せめてかようにするが礼儀かと

恐ろしい流行病にかかっていたと聞き、関口はじめ、検分に立ち会っていた者たちは思わず身を引いた。

いかがいたしましょう。拭き取れと仰せならば拭き取りますが

政次が困ったように関口を見る。

もうよい!分かった!関口は袖で口元を押さえている。以前、高熱を出した直虎の部屋にも足を踏み入れなかったほどの癇性(かんしょう)だ。疱瘡を病んだ首など、一刻も早く遠くへやってしまいたいに違いない。

政次、そなた直虎の目が、涙で潤んだ。

では、これを駿府にさようなものを持ち込んで、駿府に疱瘡が出てはいかがする!では、いかがいたしましょうか

そのときだ。震える読経の声が辺りに響いた。

見れば、首桶を前に、直虎が滂沱と涙を流しながら経を唱えている。やがて直虎は経を唱えつつ、死に化粧を施された首をかき抱いた。

一同はその光景に圧倒され、口も利けないでいる。

ようも、あのようなことができるな関口の家来がつぶやく。

わが子ならば、抱かずにはおられますまい

南渓はそう言うと、自身もまた経を唱え始めた。昊天もそれに続く。

歌うような直虎の経を聞きながら、政次は手を合わせる代わりに、そっとまぶたを閉じた。

(つづく)

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20170806放送NHKBSプレミアム18:00〜NHK総合20:00〜

第31回虎松の首